PubMed検索が捗る！GPCR関連MeSH用語の整理

MeSHとは

Medical Subject Headings (MeSH) はMEDLINE/PubMedの医学生物学情報を整理分類し検索するためアメリカ国立医学図書館により作成された階層的なシソーラス（用語集）です。MeSHは系統樹の構造をしていて 「タンパク質」のような大きな概念から「膜タンパク質」、更に「細胞膜受容体」「カドヘリン」等へと枝分かれしながら細分化していきます。思いつくキーワードを闇雲に試すのでなく関心テーマの本質を適切なMeSH用語で表現することにより、効率的な文献検索が可能になります。具体的なMeSH活用法は他所に譲るとして、PubMed検索窓に carcinoma, small cell[MeSH Terms] のようにタグ付きで入力するのが基本的な使い方です。

MeSHの落とし穴

MeSH用語の中には複数の枝に登場するものがあります。例えば神経ペプチド受容体は神経伝達物質受容体とペプチド受容体の下位語として登録されています。神経ペプチドが神経伝達物質とペプチドという２つの概念を掛け合わせたものなので妥当な取り扱いと言えます。しかし、分類が破綻する例もあります。プリン作動性のP2Y受容体はGタンパク質共役型受容体 (GPCR) の1群です。同時に、P2X受容体と呼ばれるプリン作動性のイオンチャンネルも存在します。これらは共通する性質からプリン作動性受容体という上位語にまとめられています。それはいいとして、プリン作動性受容体の上位語は、なんとGPCRなのです。GPCRでMeSH検索した結果には必然的にイオンチャンネルが混入しているのです。MeSHにはこうした落とし穴も存在します。

MeSH系統樹の複雑さも使いにくさの元になっています。GPCR関連用語の場合、最上位のGPCRから個別のタンパク質までの最大5つの階層があります。更に、階層の深さが概念の細かさを反映していません。PAR-2受容体とβ1アドレナリン受容体はどちらも個別のタンパク質でありながら、前者はGPCRの直下に、後者は5階層下に存在します。また、樹上構造末端の用語（下位語を持たない語）がGPCRのグループだったり受容体のサブタイプだったりして統一感がありません。この複雑さと一貫性のなさは、GPCR—受容体ファミリー—個別受容体という3層構造からなる、お馴染みで単純明快なGuide to Pharmacologyの分類と大きく異なります。

解決

そこで、GPCR関連のMeSH用語系統樹を把握し効率的に文献検索を行えるよう、MeSHシソーラスにGuide to Pharmacologyの分類を併記した表を作成しました（下）。インデントは分類の階層を示します。同一あるいは最も近い概念の用語が同じ行の左右に並ぶよう配置してあります。Guide to Pharmacologyの一貫性ある分類と照らし合わせることでより的確なMeSH用語を選択することができます。先述の通りMeSH分類にはGPCRでない要素が混入していますし、MeSHとG2Pで分類が異なる分子もあります。こうしたMeSHの特徴を理解することで、より効率的な検索が可能になるでしょう。

表. GPCR関連MeSH系統樹とGuide to Pharmacology分類の対比

MeSH headings and Guide to Pharmacology taxonomy were retrieved in December 2021 from the National Library of Medicine and in November 2021 from G2P, respectively.

注）タブレットやスマートフォンでは正しく表示されないことがあります。